「NICHIAではたらく」を知るマガジン

2025.04.25
【中途向け】唯一無二の品質は、地道な評価から生まれる。

第一部門
技術本部 技術部H.K.
2015年入社
※所属は2025年2月28日時点
顧客目線の解析が導く、次の一手
まず、現在の業務内容を教えていただけますか?
第一部門は、リチウムイオン電池用正極材料の製造・販売を担う部門です。技術部では、顧客である電池メーカーから品質合格や採用を勝ち取るための商品開発を行っています。私はその中で、製品や部品が計画通りの性能を発揮するか、また信頼性や安全性を満たしているかどうかなどを評価する業務に携わっています。
正極材料の「評価」の仕組みとは、どのようなものですか?
まずは、NICHIAが開発・製造している「正極材料」という黒い粉がどのような特性を示すのか、実際に電池を作成してチェックします。大切なのは、NICHIAがつくる正極材料が実際にお客さまのところで使われる電池として完成した時に、どれほどの性能を発揮するかということです。最終的にお客さまが「いい製品だ」と感じないと意味がありませんから。お客さまの要求を満たしてない場合は、どこが原因なのかを調査して解明していくための「解析業務」を行い、さまざまな方法で導き出した改善点を、ものつくりチームにフィードバックしています。
正極材料の性能は、どのような要素によって決まるのですか?
たとえば、昔に比べるとスマホやパソコンの電池が長持ちするようになりましたよね。その理由は、電池の容量が増えているからです。例えば、スマホの中に100gしか活物質が入らなかったところを200g入るようにチューニングすることで、電池の持ちが単純計算で倍になります。お客さまによって求める性能も変わってくるので一概には言えませんが、そういった技術を磨いています。
俯瞰で捉え、細部を見抜く
新しい技術を生み出すためには、どのような思考やスキルが求められますか?
電池の解析を行う上で「どこに着目するか」が非常に重要だと思います。正極材料を変えたからといって確実に電池の性能が上がるわけではなくて、お客さまが取扱う部材との相性もすごく重要になります。つまり、A社で良い評価だったものがB社にもそのまま当てはまるわけではないので、常に俯瞰的な視点で評価を行わなければなりません。その時に求められる能力の一つが「気付き」ではないでしょうか。
「気付き」とはどのような能力でしょうか?
少し専門的な話をすると、リチウムイオン電池の基本的な特性を把握するのに「充放電曲線」というものがあるのですが、作業に慣れてくるとそのチェックを飛ばしてしまいがちになります。でも、そういう基本的なチェックこそが重要で、すごく細かい変化に気づくことから突破口が生まれたりするのです。そういった作業を楽しむことができれば、良い仕事につながると思います。
逆に仕事で大変だなと感じることはありますか?
すぐに結果が出ないことです(笑)。前例をなぞったり、時間をかけたりすれば必ず達成できる業務ではないので、プレッシャーも大きいですね。電池の寿命を計測する試験にしても、一つの評価を下すまでに2か月以上を要するものもあります。なかなか結果が出ないと、チームに負担を掛けることにもなるので、一人ひとりが責任感を持ちながら業務にあたっています。
徳島で見つけた蓄電池への新たな挑戦
H.K.さんはNICHIAに中途入社されていますね。
NICHIAは3社目の就職先になります。徳島の大学を卒業後に香川県の企業に就職し、リチウムイオン電池関連の材料をつくるところから職歴がスタートしました。2社はリチウムイオン電池の製造を行う会社に就職したので、これまでずっとリチウムイオン電池の畑で仕事をしてきたことになります。その会社の部署が解散することになり、正極材料で世界トップクラスのシェアを誇っていたNICHIAへの就職を希望しました。
実際に入社してみて感じたことは?
それまでは「特定のお客さまとの取引を行っている会社」というイメージでしたが、実際に入社してみると、想像をはるかに超える取引先があることに驚きました。また、製品のラインナップを構えているのではなく、それぞれのお客さまと協議を重ねながら、一つ一つ丁寧に正極材料をチューニングしていることにも驚かされましたね。
それまでの仕事やライフスタイルとの違いはありましたか?
NICHIAに入社して一人暮らしを始めてからは、仕事の時間をコントロールできるようになりました。その理由は、会社周辺の食事処がとても早く閉まるため、いつまでも残業をしているとコンビニの食事ばかりになるからです(笑)。結婚した今では、生活リズムも安定しています。
徳島の住み心地はいかがですか?
気候が良くて、とても住みやすいですね。大阪まで日帰りで遊びに行ける距離なので、休日には家族で大阪方面に遊びに行くことも多いです。
リチウムイオン電池の最後を見届けたい
現在は管理職として業務に当たられているとのことですが、マネジメントを行う上で大事にされていることはありますか?
第一部門の中では、当部署が正極材料を評価する唯一の部署ということもあり、あらゆる部署から評価の仕事が回ってきます。つまり、実際の取引先である電池メーカーだけではなく、第一部門全体が自分たちのお客さまだと思って業務をしています。それぞれの部署が自分たちに何を求めているのか、何をしてほしいのかをしっかり考え、優先順位をつけながら効率的に評価が行えるよう意思統一を図っています。
正極材料の市場競争は、どのような状況ですか?
国内で正極材料の開発を行っている企業は、NICHIAを含めて2社しかないのですが、近年は中国の存在が非常に大きくなっています。世界市場との競争が激しさを増す中、価格面で太刀打ちするのは難しいので、お客さまの要望にしっかりと応え続けていくことで、今まで以上に信頼を増していく必要があります。
どのような部分にNICHIAの強みを感じますか?
「やりたいことは、やってみなさい」という精神が根付いていることです。新たに何かをやろうとする時、前職ではすぐ上のリーダーから課長まで、それぞれに説明が必要でした。考え方が違うとすぐ差戻しとなり、結局は実現しないことも多かったです。NICHIAの場合は、しっかりとした理屈を持って挑戦の意思を伝えると、すぐにやらせてくれる風土があります。予算が必要な場合も部署内の上司が稟議を通してくださり、いつも挑戦を力強く後押ししてくれます。
今後の目標などがあれば教えてください。
これまでリチウムイオン電池の仕事にこだわってきたのには理由があります。少し誤解を招く言い方かもしれませんが、リチウムイオン電池の終わりをこの目で見たかったんです。時代を牽引してきた一つのエネルギー媒体が収束して、次の新しいエネルギー媒体に変わる日が来るはずですが、できれば自分の目でリチウムイオン電池の最後を見届け、鍵を閉めたい気持ちがあります。とは言え、まだまだ技術改良の余地がある分野なので、もう少し先になりそうですね。