「NICHIAではたらく」を知るマガジン

2025.04.23
【対談】現場が語る、LD開発のリアルと未来

MEMBER
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第二部門 LD事業本部 LD研究開発部
Y.O.(2016年入社)
前職で半導体製造に携わり、レーザー光源の研究開発に興味を持ち入社。LDモジュールの研究開発を行う。
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第二部門 LD事業本部 LD技術部
Y.E.(2016年入社)
大学時代で光について学んだことをきっかけに、NICHIAに入社。LD製品の製造における外観検査のプログラム作成を担当。
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第二部門 LD事業本部 LD開発部
M.N.(2009年入社)
結婚を機に徳島へ移住し、前職で培った薄膜加工技術や装置開発の技術を活かすためNICHIAへ。現在は、LDのパッケージなどの開発に取り組む。
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第二部門 LD事業本部 LD製造部 製造技術課
K.M.(2022年入社)
大学時代に光半導体について学び、興味を持ったことからNICHIAに入社。現在は、LD製造の前工程に対する工程設計を担当。
※所属は2025年2月28日時点
工程ごとに宿るプロフェッショナルの力
LD(半導体レーザー)の研究・開発・製造技術に携わる皆さんにお集まりいただきました。まずは、皆さんの担当業務を教えていただけますか?
K.M.
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今日集まったメンバーですと、私は前工程に所属し、他の3人は後工程を担当しています。前工程では、LDのチップを製造しています。後工程では、できたチップを使ってパッケージに実装し、特定の機能を持たせたものを作っていく、とイメージすると分かりやすいと思います。私は、LDのチップ製造の製造技術を担当しており、より早く、安く、高品質に製造するにはどのように装置を使えば良いかを日々考えています。装置トラブルが起こったときに原因究明することも製造技術の仕事です。
Y.E.
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私は、製品の外観検査を担当しています。外観検査とは、設計した通りに製品が仕上がっているのか、異物が付着していないかなどを検査することです。その中でも私は、画像検査のシステムを製作して自動化を進め、人の手間を減らす取組みを行っています。
M.N.
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私はLDのパッケージ開発に携わっています。LDは、単体だと異物や熱に弱いので、気密封止や放熱の仕組みが必要です。また、用途によって求められる光出力も違います。例えば、LDはもともと、チップを1つだけ使ったCANパッケージが主流でした。しかし、光出力を上げるために複数のCANパッケージを並べるとサイズが大きくなり、何よりコストがかさんでしまいます。その課題を解決するために誕生したのが、複数のチップを搭載できるパッケージOctoLas™です。さらに、顧客の多様なニーズやコストダウンのために、縮小版として開発されたのがQuaLas™です。このように、LDチップを顧客のニーズに合わせて開発し、ヒット商品を生み出しています。私の部署では、このようなパッケージなどの製品設計から、製造のための工程設計を行っています。
Y.O.
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私は横浜研究所に勤務しており、LDと周辺技術を組み合わせたモジュールの研究開発を行っています。前工程でできたLDをどのような部品と組み合わせたら人々の役に立つものができるのかを考えています。
M.N.さんとY.O.さんはお二人とも開発に取り組んでいますが、どんな違いがあるのでしょうか?
M.N.
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Y.O.さんは、LDの高輝度・高出力を生かし、より尖った方向性や新たな可能性を研究開発するイメージですね。どちらかといえば、私の方がより商品開発に近いと思います。製品設計や工程設計など、新しく作る製品を現実の商品へ落とし込んでいく役割です。
LD製造を支える、それぞれの信念
なるほど。皆さんそれぞれ専門性が違うのですね。それぞれお仕事ではどのようなことを意識していらっしゃるのでしょうか。
K.M.
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私はより製造現場に近いところにいるので、現場の負担を減らせるように常に意識しています。どれだけ性能が良いものができるとしても、手作業が増えてしまっては、現場の負担になってしまいます。そうした状況を避けるために、高い品質を維持しながら現場の手間を最適化していくことが求められますね。
Y.O.
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いろいろと意識する点はありますが、最終的に「広く使ってもらえる製品にすること」が最も重要だと考えています。研究段階では、まだ明確な顧客が定まっているわけではありませんが、いくら開発に力を注いでも、必要としてくれる人がいなければ本当の価値にはなりませんから。
M.N.
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Y.O.さんとほぼ同じ考えですが、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)のバランスが大切です。特に、NICHIAは品質においては世界トップクラスを誇ります。その高い品質を堅持しつつ、希望通りの納期やコストに合わせていくのは技術者の腕の見せ所です。また、新しい技術開発をするためには熟考する時間が大切です。日々の業務に追われて思考の時間がなくならないよう、深く考えられる環境を自ら整えるようにしています。
Y.E.
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量産化を見据えると、外観検査にかかる時間はできるだけ短くしたいところです。しかし、そうすると見落とすリスクが高くなりますし、逆に精密に見ようとすればするほど検査に時間が必要になります。製品によって求められるスペックは異なるので、担当者同士でしっかりと意思疎通を図り、柔軟に対応していくことが大切だと感じています。
“世界最高”を目指すLD研究開発の現在地
LDの製造や研究開発の直近の課題はありますか?
K.M.
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LDはコストが高いので、年間を通じてコストダウンできるように計画を立て、目標達成に向けた工夫をしています。部署ごとに具体的な目標を掲げ、より安価に製造できるよう改善に取り組んでいます。そうすることで、LDがより顧客にとっても手の届きやすい商品になる可能性が高まります。
Y.O.
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現在は「世界最高の高出力LDモジュール」を目指して、数年規模の長期研究に取り組んでいます。既存のLDより性能を向上させることで、より広い領域で活用される製品となることを目指しています。
その実現のために大切なことはどのようなことですか。
Y.O.
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現状を正しく把握することが重要です。既存のLDに何ができるのか、どこに限界やボトルネックがあるのかを深く理解することで、新たな技術の可能性が見えてきます。自社だけでなく他社の技術にも関心を持ち、市場が求める方向性を意識しながら開発を進めています。その一方で、現在LDが使用されていない領域にも目を向けており、将来的にLDを活用することで新たな価値を生み出せないか、可能性を日々模索しています。
多様な専門性が交差するものつくり
最後に、それぞれの業務のやりがいや、面白さを教えてください。
Y.E.
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やはり外観検査装置を問題なく工程に導入できたときは嬉しいですね。それだけ作業者の手間を減らすことができた、という実感があり、大きなやりがいを感じます。現在はAIによる画像処理にも興味があるので、今後も積極的に挑戦していきたいと思っています。
Y.O.
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研究を進めていて、「きちんと前に進んでいる」と感じられたときにやりがいを感じます。研究では、一つのゴールにたどり着いたとしても、その仮説が間違っていたということもよくあります。それでも、試行錯誤を重ねながら一歩一歩前に進んでいけるのが面白さですね。
K.M.
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コストダウンや量産の安定化に向けた課題に直面し、挫折しそうになった場面でも、諦めずに生産条件を検討し続けた結果、奇跡的に課題を解決する条件が見つかることがあります。そうした瞬間に到達できたとき、大きな達成感があります。その条件を見つけ出すには、やはり経験が重要だと実感しました。私は現在3年目なので、これからさらに経験を積み、より精度の高い当たりをつけられるようになりたいと思っています。
M.N.
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自分が関わった製品がプロジェクターに組み込まれ、映画館などで使われているのを見たときは、本当に嬉しく思います。実際に人々に喜んでもらえている様子を見ると、この仕事をしていて良かったと感じますね。